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手相術では、寿命に関係があるとされる手のひらの筋を「生命線」というのですが、考えさ せられるのは、次のような文脈にある「生命線」。 「日本の安全保障を考えた場合、朝鮮半島というものが、今も昔も究極的な日本の生命線になっているわけです」。 「『日本の生命線』と言われた満州」。 「日本の生命線――満州の権益」。 こういう「生命線」とは、どういう意味なんでしょう。『広辞苑』の解説はこうです。「生きるか死ぬか、物事が成り立つか成り立たないかの分かれ目で、絶対に守らなければならない地点や限界。」 そうすると、日本という国の生命線とは、日本の主権が及ぶ範囲、つまり領土や領海や領空を決めた国境線のことではないのか、と僕は理解するのですが、国際政治学などでは 定義は複雑なのでしょうね。 では、朝鮮半島は日本の領土なのか。いつから、どういう経過で領土になったのか。満州はどうなのか、と考えざるを得ませんね。 一九一〇年、日本は韓国併合で朝鮮半島を日本の植民地にしました。なぜ、そんなことができたのか。日清戦争・日露戦争で日本が勝者になったからです。どういうことから戦争になったのか。 一八九四年、朝鮮南部を中心に全土で、反侵略・反封建の農民戦争(甲午農民戦争)が起き、日清両国が其の鎮圧を名目に出兵、これが日清戦争を誘発。勝利者日本は一八九六年、清国にとって不平等な日清通商航海条約を締結。 一九〇四年に始まる日露戦争は帝政ロシアと日本が朝鮮・満州の制覇を争った戦争。 要するに、支配できる領土を拡大したいハイエナとオオカミが、弱いヒツジの内輪のいざこざを利用したり、睨み合いが爆発しての戦争、帝国主義的権益獲得戦争に、日本は勝ったのでした。 「武力による威嚇あるいは武力の行使」で保持する他国・他民族の領土を生命線だと称して、天然資源を採掘し食料を栽培し、労働者・農民を移住させ、その生命・財産・権益を保護するとして軍事力を展開する。生命線を守るとはこういうことでした。 これは侵略者・抑圧者の理屈です。ブッシュはアメリカとイスラエルにとっての生命線はイラクだ・中東全域だ、というのでしょう。 冒頭の文例三つは、京大の中西輝政教授の『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』にあるのです。 この教授は、「大東亜戦争」についてのこれまでの日本人の評価は四つあったと書き、@「悲惨な戦争」「間違った戦争」、A「邪悪な戦争」「侵略戦争」、B「愚かな戦争」を挙げます。 彼が「まったく同感です」というCは、「栄光の戦争」。「長大な時間軸の中に置き直せば、日本の歴史に残る『民族の一大叙事詩』であった、とさえ思います。いかんせん指導者層はあまりにも愚かだったけれど、対して国民は、世界史にその例を見ないほどの崇高で、健気な自己犠牲精神を発揮し、まさに一致団結して英雄的に戦いました。有史以来の日本史的なスケールで考えても、日本人の心が「最も輝いた瞬間」と言ってもいいでしょう。・・・日本のあの戦争は、ドイツの戦った戦争とは道徳的には対極の位置にある、その意味では断然に「正しい戦争」だったということです。」 この教授、国際政治学・国際関係論の学者といいますが、唖然となります。「象牙の塔」にいて感受性も想像力も干からびて、美辞麗句と詭弁の術には長けるが、無辜の民の心を忖度しようという気もないのでしょう。曲学阿世の徒というほかありません。 2007・7・26 須 田 稔 |
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